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絵画と写真の関係

2022/03/02 18:43
やまちゃん1
フェルメールが利用していたカメラ・オブスクラ。山本大貴のスーパーリアリズムと木村伊兵衛の写真展を観て、絵画と写真の関係を調べてみました。

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  • 2022/03/02 19:59
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    レンズ付きカメラ・オブスクラ。フェルメールの時代ヨーロッパに普及。ガラスに写った像をトレースできる。
  • 2022/03/02 20:00
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    【絵画と写真の関係】

    ⚫15世紀の初期ネーデルランド絵画とイタリアルネサンスに成立した肖像画は、写真が登場するまで王侯貴族や聖職者を写実的に描く絵画の主要ジャンルでした。17世紀バロック期には市民階級まで需要が拡がった。しかし、19世紀の写真技術の飛躍的発展で絵画による写実の意味がなくなった。

    ●写真家ナダール(1820〜1910)の活躍

    パリに写真館をオープンしたナダールは、詩人のボードレール、音楽家のリスト、画家のドラクロワなと当時の主要な芸術家300人を写した肖像写真集「パンテオン・ナダール」を1851〜1854年に発表した。

    カメラの先祖である、カメラ・オブラスク(ピンホールの原理)は、ダ・ヴィンチも研究に使い、フェルメールはレンズ付きの機械に映し出された像をトレースして下図にしていた(同じ室内で同じアングルが多いのはそのため)。
    しかし、19世紀に写真が出来ると、現実を写す写実性は絵画の及ぶ所ではなかった。

    アカデミーの中心人物で新古典主義の巨匠アングル(1780〜1867)は、政府に対して「画家の職を奪う写真に反対する」要望書を提出していた。

    しかし、アングルの代表作の一つ「泉」(1856年) の制作に当たって、モデルを密かにナダールのスタジオで写真を撮り、参考にしていたらしい。

    写真はアングル「泉」
  • 2022/03/02 20:03
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    【絵画と写真の関係】2

    ⚫クールベの抵抗

    クールベ(1819〜1877 )は、1855年のパリ万国博覧会に「オルナンの埋葬」と「画家のアトリエ」を出品するが落選となった。

    「オルナンの埋葬」は、田舎の一般人の葬儀の様子を描いているが、正式名称は「オルナンの埋葬に関する歴史画」である。
    古典絵画の規範では、歴史画とは神話や聖書の事蹟を描いたもので、一般人の葬儀は歴史画ではない。
    アカデミーはクールベの意図を許さなかった。

    クールベは写実主義を標榜し、写真を使い写真映像のリアリティによって、形式化した古典絵画の規範を再構築しようとした。

    写真と対等な写実を目指し、絵の具をカンヴァスに塗り重ねた。
    その結果、絵画は硬く重々しいものになった。

    写真映像を取り入れた古典絵画の再構築は、かえって絵画を「絵空事」にしてしまった。

    写真は「オルナンの埋葬」
  • 2022/03/02 20:05
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    【絵画と写真の関係】3

    ⚫マネの挑戦

    マネ(1832〜1883)は、1863年のサロンに「草上の朝食」を出品するがスキャンダルを引き起こし落選する。

    マネは、男性2人を当時の服を着た状態で描き、女性のみを裸のままとした。
    さらに、女性が脱いだ服を左下のピクニックの持ち物の中に配置する事によって、「現実の裸体の女性」を描いた。

    当時主流の新古典主義あるいはロマン主義絵画、それ以前の西洋絵画史において、裸体の女性は神話や歴史上の出来事を描いた歴史画において登場するものであったため、マネが当作品で描いた「現実の裸体の女性」は画期的なものであり、同時に批判の対象となった。

    エミール・ゾラは、マネの絵画を評して、『マネは決して物語や感情を描きはしない。彼は人物画をまるで美術学校で静物画が扱われるように扱う。人物像が織りなす鋭いコントラストによって、人物を見えるがままに描く。』
    対象の映像的な把握と表現は、まさに写真の性格である。

    マネは、歴史画の規範を意識的に破壊し、さらに絵画を物語や感情から切り離し、主題を廃しスナップ写真のような絵画を創った。
    また、絵画の絵画性といえる二次元性も追求した。

    写真の登場が、マネを「近代絵画」の父にしたのかもしれない。


    写真は「草上の朝食」
  • 2022/06/08 13:35
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    【絵画と写真の関係】4

    ⚫ゲルハルト・リヒター(1932〜)
     旧東ドイツ ドレスデン生まれ

    【引用】
    『東京国立近代美術館「ゲルハルト・リヒター展」より 写真と絵画、どちらが客観か主観か

    リヒター作品における写真と絵画の関係——あえて一言でいうと、リヒターとは、複製技術時代以降に絵画はいかにして可能なのかを考え続けてきた作家です。では、なぜリヒターは写真をトレースして描くことを始めたのか。写真による客観性を利用することが、フォトペインティング制作のモチベーションのひとつだったと考えられます。真っ白なキャンバスに絵を描こうと思うと、コンポジションや色を考える必要が出てきますが、写真を忠実にトレースすれば、絵画の約束事を回避できる。絵画における主観的判断を極力排除するために、写真の客観性を用いたのです。

    西洋の美術史において重要なジャンルである肖像画、静物画、風景画を数多く残しています。ある意味で前時代的ともいえるジャンルの絵画を、現代においてどう描くことができるかがリヒターの関心事でした。

    桝田倫広|Tomohiro Masuda
    東京国立近代美術館/主任研究員。』

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